【絶望から希望へ:神戸刑務所編】その時、懲役は飛んだ!突然の顔面飛び蹴り‼️「西」の男たちの熱い突破者精神《さかはらじん懲役合計21年2カ月》
凶悪で愉快な塀の中の住人たちVol.36
◼︎ニイニイ、今度の運動の時間に、奴に飛びます
ボクのいる三級房は、懲役もどんどん入れ替わり、この頃にはある組織の下部団体に籍を置く、沖縄出身の竜也という、体形も顔も元横綱の曙にそっくりな奴がいた。
この竜也は両足水虫に侵されていて、部屋でも大変苦労しており、浮いた存在になっていた。しか し、ボクはそんな竜也と仲良くしていた。東京弁を使うボクも、冷たい感じがすると言われて、周り から一線を引かれていたからである。
竜也の事件は何であったか思い出さないが、二年未満の一番務め易い服役であったと思う。そんな 竜也とボクは打ち解け合い、いつしかお互いを「竜也」、「ニイニイ(アニキ)」と呼ぶようになっ ていた。
ボクがある日、「アニキ」と呼ぶ竜也に、「アニキでは周りの目もあるから、呼ぶなら沖縄の言葉 にしろよ」と言い、「ところで、沖縄では『アニキ』は何て呼ぶんだ?」と訊いて、「ニイニイ」に なったのだ。
しかし、水虫で両足に包帯を捲くほどになっていた竜也は、部屋の懲役たちがそのことを担当に直 訴したことから、やむなく独居へ移っていった。
その竜也が、同じ工場のどこかの不良崩れの懲役との確執から、「ニイニイ、満期で上がる前に奴 に〝飛び〟ます」と、その頃、食堂の座る場所が近かったことから、腹の虫が収まらないのか、ときどき、そんなことを昼食後の休憩のときに竜也は口にしていた。
竜也の満期はまだ先が8カ月もあった。ボクはそんな竜也に話した。
「そんなに悔しくて我慢できないなら、今やれよ。満期まで待っていたら、気が萎えるぞ。それに 現役が堅気に舐められてたんじゃ、笑い者だろう。本当に悔しいなら『鉄は熱いうちに打て』だ。オレは竜也がいなくなるのは本当は寂しい。でも、行く道を行くしかないだろう。それに自分に正義が あり、悔しいならなおさらだ。もし、我慢するなら、愚痴を言わずに出るまで我慢しろ。それができなければやることだ」
何日かすると、竜也が言ってきた。
「ニイニイ、今度の運動の時間に、奴に飛びます」
(『ヤクザとキリスト〜塀の中はワンダーランド〜つづく)
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2020年5月27日『塀の中のワンダーランド』
全国書店にて発売!
新規連載がはじまりました!《元》ヤクザでキリスト教徒《現》建設現場の「墨出し職人」さかはらじんの《生き直し》人生録。「セーラー服と機関銃」ではありません!「塀の中の懲りない面々」ではありません!!「塀の中」滞在時間としては人生の約3分の1。ハンパなく、スケールが大きいかもしれません。
絶望もがむしゃらに突き抜けた時、見えた希望の光!
「ヤクザとキリスト〜塀の中はワンダーランド〜」です。
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